出産適齢期をすぎた未婚女性が、結婚後に妊娠・出産の夢を叶える手段の1つに、卵子凍結があります。
卵子凍結は、赤ちゃんのもとである「卵子」を卵巣から採取し冷凍保存する技術です。
これまでは病気事由でのみ適応されていた施術でしたが、晩婚化にともなって、高齢出産対策としても適応されるようになってきました。
本記事では、結婚したら自分の子供がほしいけれど、年齢的に授かれるか不安な未婚女性に向けて、
- 卵子凍結とは。卵子凍結にはどんなメリットがあるの?
- 卵子凍結から妊娠・出産の確率
- 卵子凍結にかかる費用
- 卵子凍結の施術の内容と流れ
これらを実際に卵子凍結をした筆者の体験談をもとにお伝えします。
卵子凍結とは。卵子凍結にはどんなメリットがあるの?
卵子凍結は、ホルモン剤で卵巣を刺激し、複数の卵子を育てた上で採取・凍結保存する技術です。
冷凍保存した卵子は、解凍してパートナーの精子と掛け合わすことで受精卵となり(=体外受精)、その受精卵を母体の子宮内に戻して着床すれば、妊娠が成立します。
卵子凍結は自費診療のため、1回の費用の相場が50万円~100万円と、大変高額な施術です。
こんな大金をかけてまでなぜ卵子凍結をする人がいるのか、それは、「凍結した時の年齢で妊娠にチャレンジできる」という大きなメリットがあるためです。
卵子の年齢=女性本人の年齢。卵子の老化は35歳を境に一気に加速する
実は卵子は女性が生まれた時点で抱えている細胞で、体内で新たに作り出すことができません。
卵子は本人と共に歳を重ね、日に日に老化・減少していきます。誕生時約200万個もあったのが、妊娠適齢期には20~30万個ほどにまで減少、そこから毎月1000個ずつ減少していきます。
年齢を重ねるほど卵子の質は劣化し、妊娠(受精)しにくくなります。また、受精しても細胞分裂時にエラーを起こしやすくなります。結果、流産や障害のある子供が生まれる確率が高まります。
下の表を見ていただけますとお分かりの通り、35歳以降、卵子の質は著しく低下し、染色体異常や流産の確率がぐっと増してしまいます。
率/年齢 | 30歳 | 35歳 | 40歳 |
---|---|---|---|
自然妊娠率 | 25~30% | 18% | 5% |
ダウン症率 | 1/952 | 1/385 | 1/106 |
流産率 | 10.0% | 20.7% | 41.3% |
出典:厚生労働省
「卵子凍結」をすると、将来妊娠にチャレンジする際に、凍結した年齢の卵子でトライできます。
例えば、35歳で卵子凍結をし、40歳で体外受精をしたとしたら、35歳の妊娠率やリスク同等の結果を得られることになります。つまり、実年齢の卵子で妊娠する場合に比べて妊娠率は約3倍、染色体異常のリスクも流産率も半分になるのです。(※平均的な確率での見解です)
このため、結婚が決まる前に卵子凍結を検討する女性が増えてきています。
卵子凍結から妊娠・出産の確率
染色体異常や流産の確率を下げられる卵子凍結ですが、1つ大きなデメリットがあります。
それは、高額な費用が発生するわりに、出産まで至る確率が高くないことです。
卵子凍結から出産に至るまでには、以下の6つの難関が存在していて、各ステップで卵子のいくつかが脱落してしまいます。
- 卵子の採取
- 卵子の凍結
- 卵子の解凍
- 受精
- 着床(妊娠)
- 出産
採取時、ホルモン剤で育てた複数の卵子を採取しますが、取れる卵子の数には個人差があります。
凍結が上手くいかない卵子や、解凍の際に壊れてしまう卵子もあります。
解凍に成功しても受精してくれなかったり、受精卵になっても着床(妊娠)してくれないこともあります。
無事妊娠しても流産してしまうこともあります。
卵子凍結の技術はクリニックによって差がありますが、例えば私が利用したクリニックの場合、1回のチャレンジで凍結できる卵子の数は平均5~15個で、無事に解凍できるのはそのうちの7~8割程度とのことでした。
そこから受精を経て妊娠に至る確率は、通常の体外受精よりも低めということで、30代で25%以下、40代で20%以下、さらに卵子年齢相応の流産率(35歳で2割、40代で4割)も加味すると、数%~20%~の出生率と推測されます。
つまり、卵子を10~15個凍結して1人出産できる、くらいの確率です。
私が卵子凍結を行った結果と今後の妊娠の確率
私は、37歳6ヶ月で卵子凍結を行いました。
採取できた卵子の数は24個で、そのうち無事に凍結できた数は21個でした。
これほどの数の卵子を凍結できたのは、お世話になったクリニックの技術力のお陰かもしれません。
21個ありますので、14~5個の卵子を無事に融解できると予想しています。
担当医からは、「これだけ凍結できたら大丈夫じゃないかな」と言われています。
卵子凍結にかかる費用は、1クールー総額50万円~100万円
卵子凍結は自費診療です。
1回のチャレンジ=初診・検査・ホルモン剤での刺激~採取・凍結の過程で、診察・処置・投薬・注射・手術代すべて合わせておよそ50万円~100万円かかります。
また、年間の保存料として5~10万円程度の料金もかかってきます。
私の場合は、1クールー総額87万3240円かかりました。
料金の明細詳細は、次の章の体験レポートの中でお伝えします。
卵子凍結の施術の内容と流れ
ここからは私の実体験に基づいて、できるだけ詳細にお伝えしますね。
クリニックや患者さんによって差は出ますが、薬の種類や飲む日数、注射の回数など、おおよそこのようになるとお考えいただけたらと思います。
まず、トータルの通院回数ですが、遠方など、頻繁に通えない状況の人でも、最低3~5回の通院が必要で、初診から採卵(卵巣内の卵子を注射で吸い取って体外に出す手術)完了までは、トータル20日前後かかります。私は3回受診しました。
【卵巣凍結の受診の回数とタイミング】
- 生理が始まる3日前に受診(予定を立てる&内診&血液検査)
- 生理になって9日後に受診※(卵子の成長具合を確認)
- 生理になって16日後に受診(採卵)
※遠方でない場合は、生理3日目も受診となったり、卵子の状態によっては採卵予定日前に確認日が入ることもあるようです。
生理3日前に初診(予定を立てる)
クリニックのHPから予約をし、生理3日前に診察に来るよう案内されました。
初診では以下のことをしました。
- 生理予定日を伝えて、採卵までのスケジュールを立ててもらう
- 内診
- 血液検査(性病や肝炎、風疹、貧血の有無、腎機能、肝機能)
- 薬・注射の処方
内診では超音波スコープで子宮の状態を確認されました。
加えて、今後使用する点鼻薬と内服薬と注射器(10日ほど自己注射をします)をもらい、使い方や飲み方の説明を受けました。
卵巣凍結で使用する薬と注射
【点鼻薬】
ナファレリール点鼻薬0.2%。排卵を誘発する薬です。鼻粘膜に向けてシュッと吹きかけて使用します。
1日2回、12時間毎に使用します。生理3日前から使用するよう指示がありました。
【内服薬】
バイアスピリンとレボフロキサシン錠500mg。
バイアスプリンは卵巣への血流を良くして卵胞発育を促す薬です。
レボフロキサシン錠は膣内の細菌等を殺菌して採卵の時に菌がお腹の中に入らないようにするための薬です。
どちらも生理3日目から使います。
【注射器】
ゴナールエフ 皮下注ペン。
お尻や太ももに自分で打ちます。こちらも生理3日目から使用して、10日間続けました。ペンタイプで針がとても細く短いので、素人でも使いやすく、すぐに慣れました。
これらの点鼻薬と薬と注射で、通常卵子が1個成長するところを、複数個成長させます。
初診でかかった費用は67万7079円
初診では、血液検査や渡された薬代・注射代だけでなく、採卵費用や凍結に関わる費用も合わせて支払いました。
生理になって9日後に受診※(卵子の成長具合を確認)
2回目の診察です。
卵子の成長具合を確認します。
内診してもらったところ、「個数は問題ないけれど卵が小さめ」だと言われました。予定日までに成長しきってなかったら延期にするかもしれないとのこと。
2回目の診察でかかった費用は9万970円
追加で注射器を出されたのと、診察代です。高額すぎて頭が麻痺してきます。
この日、採卵日の2日前に打つ、仕上げのホルモン注射(オビドレル)を渡されました。
これがご覧の通りプロフェッショナルすぎる注射器で、怖くて自分でできず、友人にお願いして刺してもらいました。
生理になって16日後に受診(採卵)
いよいよ採卵当日です。
当日は飲食禁止、朝一で痛み止めの座薬を入れて、クリニックに向かいました。
採卵前に卵の状態をチェックしてもらいます。「思ったよりあれから育ったね、これなら大丈夫」ということで、予定通り採卵となりました。
採卵施術
採卵室に入ると、担当スタッフさんがご挨拶をして下さいました。
内診代に横になると先生がいらして、消毒、局所麻酔の注射、超音波で卵を確認しながら注射器で1つ1つ吸い取る、という作業が行われました。
局所麻酔をしていても、めちゃくちゃ痛かったです(痛みは個人差があるようです)。ただ、15分程の短い施術だったので、なんとか耐えられました。
(その後、お腹の痛みは3~4日続きましたが、生活に支障が出るほどではありませんでした。)
採卵後
採卵後は1時間程度、ベットで休みます。ココアやチョコレートを頂きながら、くつろぎました。
その後、ホルモン剤の副作用でOHSS(卵巣過剰刺激症候群)になるのを防ぐための薬を出してもらって帰路に着きました。
【採卵後に処方された薬】
レトロゾール。エストロゲン(卵胞ホルモン)の産生を抑制する薬。
カバサール。プロラクチン(黄体刺激ホルモン)を下げる薬。
柴苓湯(サイレイトウ)。卵巣過剰刺激症候群の予防に使われている漢方薬。
バナン。細菌による感染症を防ぐ薬。
採卵日に支払った費用は10万5200円
採卵日当日にかかったお金は、局所麻酔代10,800円と卵子が沢山撮れたので追加の凍結料(1個あたり5000円)、合計10万5200円でした。
卵巣凍結を実体験してみての所感
私は薬の副作用を感じやすい体質のため、ホルモン剤で卵巣刺激をしている間は、体調があまりよくありませんでした。
お仕事がハードな女性だと、やや厳しい期間となる気がします。
ただ、初診から採卵完了までの期間は20日程度と短く、施術後の後遺症もほとんどありません。
一番の問題はやはり、高額な費用だと思います。
一回のチャレンジで50万~100万円。その後も年間数万円単位で保存料がかかります。
実際に妊娠・出産にチャレンジする際は体外受精となりますので、さらに1回あたり50万円~の費用が発生します。
これだけのお金を支払っても、絶対に妊娠できる保証はありません。
とはいえ、現在の医学で、妊娠率・健常なお子さんを授かる確率を最大限上げるための現実的な手段は、卵子凍結以外に存在しません。
ご自身の人生にとって、自分の子供を持つということがどれだけ重要なことなのか、重なる年齢を考えながら、一度真剣に考えてみても良いのかもしれません。